ABOUT CARE 心房細動

心房細動は心房が細かく動く(小刻みに震える状態)になる不整脈です。動悸や、胸部不快感、運動能力の低下が自覚症状として出現することがあります。放置することで脳梗塞や心不全を招くことがあります。

心房細動の診断方法

心房細動は、心電図検査で特徴的な波形(P波の消失や不規則なRR間隔など)が確認されれば、すぐに診断可能です。しかし、一時的にしか不整脈が出現しない場合は、診断が難しいことがあります。

当院では、eclatやHeartnoteといった1週間にわたって心電図を記録できる携帯型デバイスを活用することで、診断精度の向上に努めています。これにより、日常生活中に発生する一過性の心房細動も捉えやすくなります。

eclatやHeartnote装着中の日常生活の制限

小型で軽量な装置のため、普段の生活をほぼ制限なく送ることができます。ただし、以下の点にご注意いただいています。

  • 半身浴・シャワーは可能であるが、サウナは不可
  • 激しい運動や激しい体の動きは、装置のずれや誤作動を防ぐため控えめにすることが望ましい
  • 装置の付近に強い磁気や電波を発する機器(MRIなど)は不可
  • 飛行機などの旅行はさける

心房細動の治療は?

心房細動の治療は大きく3つに分かれます。

  • 心房細動の症状を抑える/発作頻度を減らす治療
  • 心房細動の合併症を予防する治療
  • 心房細動の根治を目指す治療

心房細動の症状を抑える/発作頻度を減らす治療

心房細動に対する治療には、症状の緩和や発作頻度の低下を目的とした薬物療法があります。

1. 心拍数のコントロール(レートコントロール)

発作時の動悸や息切れなどの症状を抑えるために、心拍数を安定させる薬剤を使用します。

  • β遮断薬(例:ビソプロロール)
  • カルシウム拮抗薬(例:ベラパミル)

2. 発作の予防(リズムコントロール)

心房細動の発作自体を減らすことを目的に、抗不整脈薬を使用することがあります。症状や心機能の状態、合併症の有無などを考慮して選択します。

心房細動の合併症を予防する治療

心房細動では、心房内の血液がうっ滞しやすくなるため、血栓(血のかたまり)が形成されやすくなります。この血栓が血流に乗って体内を移動し、血管を詰まらせることで塞栓症が生じます。

  • 脳に飛んだ場合:脳梗塞
  • 腎臓に飛んだ場合:腎梗塞
  • 他にも、腸や四肢などの臓器への塞栓も可能性があります

重篤な障害や後遺症が残るリスクがあるため、予防が非常に重要です。

脳梗塞リスクの評価

脳梗塞の発症リスクは、以下のようなスコアを用いて評価します:

  1. CHADS₂スコア
  2. CHA₂DS₂-VAScスコア
  3. HELT-E₂S₂スコア など

1. CHADS₂スコア

0点:低リスク 1点:中リスク(抗凝固療法の検討)2点以上:高リスク(抗凝固療法推奨)

2. CHA₂DS₂-VAScスコア

0点:非常に低リスク、1点:低リスク(抗凝固療法の検討)、2点以上:中〜高リスク(抗凝固療法推奨)

3. HELT-E₂S₂スコア

これらのスコアに基づき、経口抗凝固薬(DOACやワルファリン)による治療を行い、血栓形成を防ぎます。

心不全

もう一つの重要な合併症が心不全です。
心房細動が続くことで心臓のポンプ機能が低下し、息切れ・浮腫・倦怠感などの症状を引き起こすことがあります。

心房細動の根治を目指す治療

心房細動の多くは、肺静脈から発生する異常な電気信号が原因で、これが左心房の異常興奮を引き起こします。この異常な電気信号を遮断し、心房細動を根本的に治療する方法として、カテーテルアブレーション(血管内から心筋を焼灼する治療)があります。カテーテルアブレーションは、心房細動の再発を減らし、正常な心拍リズムの維持を目指す効果的な治療法です。

治療の適応がある患者様には、当院から治療可能な近隣の専門病院へご紹介しております。

文責:小西弘樹 日本循環器学会 循環器内科専門医