ABOUT CARE 性感染症

性感染症とは

性病とは、性行為によって感染する病気の総称です。原因となる細菌やウイルス、原虫が体内に侵入することで感染します。当院の受診が比較的多い性病に関して特徴を記載します。


性器クラミジア感染症

性器クラミジア感染症は、クラミジア(Chlamydia trachomatis)という細菌によって引き起こされる性感染症で、日本国内で最も多く報告されています。感染者は10代後半から20代の若年層に多いですが、誰にでも起こり得る病気です。

感染から症状が出るまでの潜伏期間はおよそ1~3週間で、多くの人が無症状のまま感染していることが特徴で、そのまま放置されてしまうケースも少なくありません。

男性の症状

  • 排尿時の痛み(排尿痛)
  • 尿道から膿や分泌液が出る
  • 下腹部の違和感

女性の症状

  • おりものの増加や異常なにおい
  • 不正出血
  • 下腹部の痛み
  • 子宮頸管炎や子宮内膜炎、卵管炎へ進行することもあります

クラミジア感染症を治療せずに放置すると、男女ともに将来的な不妊症の原因になる可能性があります。

  • 男性では、精巣上体炎などの合併症によって精子の通り道に障害が起こる可能性があります。
  • 女性では、感染が子宮から卵管、骨盤内へ広がると骨盤内炎症性疾患(PID)を引き起こし、卵管が癒着・閉塞することがあります。

検査・治療について

クラミジア感染症は、尿検査や膣分泌物の検査で診断され、抗菌薬で治療します。治療を完了するまでは性行為を控える必要があります。


淋病

淋菌(Neisseria gonorrhoeae)に感染することによって引き起こされる性感染症で、日本ではクラミジア感染症に次いで2番目に多い性感染症です。

この病気は主に、性行為(膣・肛門・口腔を含む)を通じて感染し、男女ともに尿道炎や子宮頸管炎、咽頭炎、直腸炎などを引き起こします。潜伏期間は感染から約2日~9日で感染経路は性器性交、オーラルセックス、アナルセックスなどの粘膜接触です。感染力が非常に強く、パートナーとの接触で高確率で感染するため、予防が非常に重要です。

男性の症状(尿道炎が中心)

  • 排尿時の激しい痛み(焼けるような感覚)
  • 尿道からの黄色~白色の膿(分泌物)
  • 頻尿や残尿感

女性の症状(子宮頸管炎が中心)

  • おりものの増加や異臭
  • 不正出血
  • 下腹部の痛み
  • 排尿時の痛み

淋病を放置すると、以下のような合併症や後遺症が起こる可能性があります。

  • 男性では精巣上体炎を起こし、精子の通路に障害が生じることで不妊につながる可能性があります。
  • 女性では 子宮から卵管にかけて感染が広がり、卵管炎や骨盤内炎症性疾患(PID)を引き起こし、不妊や子宮外妊娠のリスクが高まります。

淋病は抗菌薬による治療が可能ですが、近年は薬剤耐性菌の増加が問題となっています。クラミジアと同時に感染していることも多く、複数の性感染症を同時に検査・治療することが重要です。


梅毒

梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum)という細菌による性感染症です。病名は症状としてみられることがある赤い発疹が楊梅(ヤマモモ)に似ていることに由来します。主に性行為によって感染し、オーラルセックスやキスでも感染する場合があります。潜伏期間は3週間です。

  • 第1期:感染後数週間 性器や肛門、口などに赤くて硬いしこりや潰瘍ができる また、股の付け根の部分(鼠径部)のリンパ節腫脹が出現することがあります。痛みを伴わないことが多く、症状は治療をしなくても自然に軽快し、病気が自覚症状がないまま進行する場合もあります。
  • 第2期:感染後数か月 梅毒トレポネーマが血液によって全身に運ばれ、バラ疹とよばれる淡い発疹が手や足、体に出現します。その他にも肝臓、腎臓など全身の臓器に様々な症状を呈することがあります。
  • 顕性梅毒:感染後数年 感染後数年程度経過すると、ゴム腫と呼ばれる腫瘤が皮膚や筋肉、骨などに出現し、周囲の組織を破壊することがあります。また心血管梅毒では大動脈瘤が生じたり、神経梅毒では精神症状や認知機能の低下などを伴う進行麻痺、歩行障害などを伴う脊髄癆がみられることもあります。

性器カンジダ症

カンジダ菌を性器に保有していても、男性の場合症状の訴えは多くありません。しかし、包茎・糖尿病・ステロイド剤使用などの要因があると症状が出る傾向にあり、亀頭包皮炎を生じることがあります。


性器ヘルペスウイルス感染症

性器ヘルペスの原因は単純ヘルペスウイルス1型と2型です。およそ8割は2型が原因です。感染をすると、潜伏期 (2日~10日間) を経て、水疱を形成します。

潜伏期間は感染から約2~10日間で初感染では、痛みを伴う水疱や潰瘍が性器や肛門周囲に現れ、発熱やリンパ節の腫れ、排尿困難などの全身症状を伴うこともあります。水疱は破れて潰瘍となり、数日~2週間ほどで治癒します。

抗ウイルス薬(アシクロビル、バラシクロビルなど)により、症状の緩和・期間の短縮が可能です。


いずれも完治が可能です。気になる症状や感染の心当たりがあれば、さらなる感染拡大を防ぐためにも早めに医療機関を受診するようにしましょう。