ABOUT CARE 感染性胃腸炎

感染性胃腸炎の症状

感染性胃腸炎の多くは、嘔吐ないしは下痢症を主訴として来院され、腹痛や発熱を伴うこともあります。胃腸に感染を生じると胃腸の動きが悪くなって、食物が消化管で渋滞したような状態になり嘔吐症状が出現します。そして、消化管が動き出すと嘔気は改善傾向となり、下痢症状が出現し快方に向かう場合が多いです。

感染性胃腸炎の治療

感染性胃腸炎に対しては、まずは水分摂取を励行した上で、基本的には対症療法のみ行うことが推奨されています。成人の急性下痢症では、ウイルス性、細菌性に関わらず自然軽快することが多く、脱水の予防を目的とした水分摂取の励行といった対症療法が重要です。重度脱水の乳幼児や高齢者では、成分調整した経口補水液(Oral Rehydration Solution: ORS、大塚製薬OS-1など)が推奨されているが、成人では、塩分含有量が少ない飲料の場合は適宜塩分摂取も必要とされるものの、多くの場合、果物ジュースやスポーツドリンク等の摂取で十分とされています。嘔吐症がある場合には、飲水が不可能なため制吐薬(ドンペリドン口腔内崩壊錠など)を処方し症状緩和を行います。

下記に厚生労働省の抗微生物薬適正使用の手引き の急性下痢症状に対する加療のフローチャートに示されているように、一部重症例などで抗菌薬(抗生物質)の適応はありますが、多くの場合には投与の必要性はないとされています。当院でもこの方針に従い、無用な抗生剤投与は行わずに加療を行っています。

厚生労働省 抗微生物薬適正使用の手引き 第三版

当院でよく使用する治療薬

  • ナウゼリンOD(ドンペリドン口腔内崩壊錠):胃・十二指腸のドパミンの働きを抑えて、消化管運動を改善することで嘔気を抑えます。
  • 整腸薬(ラックビー、ビオスリー配合錠など):腸内に乳酸菌などを補うことで腸内環境を整え、下痢、便秘、腹部膨満などの消化器症状を改善する薬
  • 五苓散:蒼朮(ソウジュツ)茯苓(ブクリョウ)桂皮(ケイヒ)沢瀉(タクシャ)猪苓(チョレイ)の5つの生薬から構成される漢方。食欲不振、腹痛の期間の短縮など。
  • ブスコパン(ブチルスコポラミン):上記3剤に比較すると使用頻度は少ないですが、腹痛症状の訴えが強い場合などに使用することがあります。副交感神経を亢進させるアセチルコリンの作用を抑えることで、消化管の運動亢進に伴う痛みや痙攣、下痢などを抑える薬

腸管出血性大腸菌など重篤な感染の場合、止瀉薬(ロペミン、一般名ロペラミド)は症状悪化を来す場合があるため、基本的には処方をしていません。

診察時によくあるご質問

人にうつりますか?仕事に行ってよいですか?

細菌ウイルスは自然発生するわけではありませんから、基本的には”感染性”胃腸炎であれば感染性があると考えますが、感染性の強さはウイルスの種類により異なります。法律で定められた出勤停止日数の明確な決まりはありません。 会社ごと就業規則で出勤停止日数が定められている場合があるため、勤務先にご確認ください。 

流行しているノロウイルスか調べることはできますか?

ウイルス性胃腸炎の代表的な原因であるノロウイルス、ロタウイルス、アデノウイルスの判定にはラピッドテスト(イムノクロマト法)がありますが、3歳未満65歳以上、もしくは抗癌剤治療患者さんにしか保険適応がありません。また、保険適応外ですが外部検査機関で糞便からウイルスや細菌を特定することは可能です。しかし、検査依頼してから結果が出るまで数日~10日ほどかかるため検査結果が判明するころには治癒しており、あまり検査意義がありません。

このような理由や抗微生物薬適正使用の手引きにあるように大きく治療方針が変わらないことから、重症例でない場合には「検査する意義もなく調べることをしていません」と回答しています。重症例であった場合には近隣医療機関へ紹介となり、紹介先で必要に応じて検査となります。