ABOUT CARE 糖尿病

診察室で「糖尿病なんて病名は知りません、生まれて初めて聞きました」という人はあまりおられませんが、糖尿病を患っている方でも実際どういう病気かを上手く説明できる方は意外と少ない印象です。

糖尿病とは?

インスリンという血糖値を低下させるホルモンの分泌能が低下したり、効きが悪くなったりすると、血糖値が正常域から逸脱してしまい慢性的に高血糖の状態が持続してしまいます。この状態を糖尿病といいます。高血糖が長期間続くと脳梗塞・心筋梗塞・視力低下・腎臓機能低下などの合併症が生じます。

糖尿病には1型と2型に分類されますが、多くは2型で、生活習慣や肥満が関係しています。口渇・多尿・倦怠感・体重減少などが糖尿病で見られる症状ですが、初期は自覚症状に乏しいため採血検査で指摘されて気づかれることも多いです。

糖尿病の診断について

糖尿病の診断については3つの方法があります。

  1. 糖尿病型を2回確認(1回は必ずHbA1cだけでなく血糖値で確認する)
  2. 糖尿病型(血糖値に限る)を1回確認+慢性高血糖症状(典型的症状や糖尿病網膜症)が存在する
  3. 過去に糖尿病の診断された証拠がある

上記を念頭に糖尿病の疑いがあり受診された場合には、下記のようなフローチャートで精査を行います。HbA1cは健診などでも測定される過去1~2か月間の平均血糖値を反映しています。表のOGTTとは経口ブドウ糖負荷試験のことで、75gのブドウ糖を摂取したあとの血糖値を判断する試験です。

出典:糖尿病診療ガイドライン2024

糖尿病と診断されたら、食事療法、運動療法、薬物療法を組み合わせて加療を開始します。

  • 食事療法:身長と活動量から計算してカロリーと炭水化物の適量を設定する。
  • 運動療法:有酸素運動(ウォーキングなど)を週に計150分以上行うことが望ましい。
  • 薬物療法:内服薬や注射薬など病態に応じて選択する

血糖値のコントロール目標は下記の通りです。

出典:糖尿病診療ガイドライン2024

食事療法について

  • 厳しい食事制限が重要なのではない
  • 過食や偏食のない、規則正しい食事習慣

食事療法は糖尿病治療において最も重要です。膵臓に負担のかかる食生活を続けると、膵臓のインスリン分泌細胞であるβ細胞が疲弊して、さらなる血糖コントロールの悪化を招き、β細胞のインスリンが枯渇するとインスリン注射が必要になってしまいます。暴飲暴食や、不規則な時間の食事が膵臓に大きな負担をかけるため、過食や偏食のない、規則正しい食事習慣が重要です。栄養バランスのとれた食事を3食とることで、血糖値の乱高下を防止します。食事療法とは厳しい食事制限のことではありません。

運動療法について

  • 運動療法の効果1つ目は血糖値を下げる効果
  • 運動療法の効果2つ目はインスリンの働きを高める効果

運動には、血糖値を下げる効果とインスリンの働きを高める効果があります。血液中の糖が筋肉で消費され、また筋肉の活動量増加によりインスリンの働きが高ります。ウォーキングや水泳などの全身運動(有酸素運動)を週に合計で150分以上行い、腹筋や腕立て伏せ、スクワットなど筋力トレーニング(レジスタンス運動)も行うと効果的です。

ただし、糖尿病網膜症がある場合など病状によっては運動が禁止の場合もあるのでご注意ください。

薬物療法について

糖尿病の薬は内服薬と注射薬の2つがあり、病状に応じて使い分けます。

内服薬

  • 糖の吸収を穏やかにする薬(αグルコシダーゼ阻害薬など)
  • インスリンの分泌を促す薬(スルホニル尿素薬など)
  • インスリンの効きを改善する薬(ビグアナイド薬など)
  • 糖の排泄を促す薬(SGLT2阻害薬など)

注射薬

  • 体内のインスリンの分泌を促進する薬(GLP-1受容体作動薬)
  • 体内で不足しているインスリンを補充する薬(インスリン製剤)

2型糖尿病の場合には内服薬から開始し、血糖コントロールが不良の場合に注射薬を検討します。薬物療法が始まった後も、食事療法と運動療法は継続することが重要です。

糖尿病治療の目標とするところ

糖尿病は完治させることが目標ではありません。下の図に示されているように、糖尿病の合併症を予防して、糖尿病のない人と変わらない寿命とQOL(生活の質)を維持することが目標です。

出典:糖尿病診療ガイドライン2024