ABOUT CARE 過敏性腸症候群

過敏性腸症候群(IBS: irritable bowel syndrome)は若年者に多く、便秘などの便通異常と、腹痛や腹部膨満感、腹鳴などの症状が出現する症候群です。睡眠中に症状がでることはなく、排便によって腹部症状が軽快する特徴があります。症状によって、下痢型、便秘型、下痢と便秘を交互に繰り返す混合型、分類不能型(ガス型など)に分類されます。腸の運動異常、内臓の知覚過敏、性格などの心理的要因に腸内細菌叢の乱れやストレスが関与して起こるといわれていますが原因は確定していません。

治療方法

1. 食事療法

規則的な食事摂取、過剰に食事を摂らない、ゆっくり時間をかける、十分な水分摂取、冷たいものを摂りすぎないなどの注意が必要です。一般的に増悪因子となる食事は以下のようなものがあります。

  • 高FODMAP食:下記の詳述する高FODMAP食は症状の増悪因子になります。
  • アレルギーの可能性がある食べ物:腹痛や下痢が起こりやすくなるため避けるべきです。
  • 脂質の多い食事:脂質が分解物の脂肪酸が腸を刺激し下痢になりやすくなります。
  • 香辛料:胡椒、カプサイシン、生姜、シナモン、ターメリック
  • カフェイン:大腸、特に直腸S状結腸の運動を刺激し症状を増悪させます。
  • アルコール:短期間に多量のアルコールを摂取した場合に下痢症状の増悪因子になります。
  • 乳製品:乳糖不耐症のIBSの人は下痢が誘発されます。
  • 不溶性食物繊維:食物繊維、特に不溶性食物繊維は下痢や腹部膨満感の原因となります。

FODMAP食とは?

FODMAPは「Fermentable Oligosaccharides, Disaccharides, Monosaccharides and Polyols(発酵性のオリゴ糖、二糖類、単糖類、ポリオール)」の頭文字でオリゴ糖、二糖類、単糖類、ポリオールは小腸で分解吸収されにくく、大腸で腸内細菌により大腸内で発酵して下痢や腹痛、お腹の張りの原因となり、IBS症状が出現しやすくなります。

高FODMAP(避けるべき)食品の例
 オリゴ糖:小麦、玉葱、ニンニク、大豆などの豆類
 二糖類:牛乳、ヨーグルト、アイスクリーム
 単糖類:ハチミツ、一部の果物(りんご、もも、すいかなど)
 ポリオール:人工甘味料(ソルビトール、キシリトールなど)、キノコ類

2. 薬物療法

前述の通り、腸の運動異常、内臓の知覚過敏、性格などの心理的要因に腸内細菌叢の乱れやストレスが関与して起こるといわれており、症状を改善し、生活の質を改善するための治療薬も多岐にわたります。

  • ポリカルボフィルカルシウム (コロネル / ポリフル):便秘型IBS・下痢型IBSどちらにも使用します。
  • プロバイオティクス製剤 (ビオフェルミン・ラックビー・ミヤBMなど):腸内細菌のバランスを整えます。
  • トリメブチン (セレキノン):消化管の運動機能を調節し、排便回数や腹痛などを改善する。
  • 抗コリン薬 (ブスコパンなど):腹痛を和らげるために使用します。
  • 粘膜上皮機能変容薬(ルビプロストン (アミティーザ)、リナクロチド (リンゼス)):便秘型IBSに使用されます。
  • 酸化マグネシウム (マグミットなど):便秘型IBSに使用されます。
  • 大腸刺激性下剤 (ラキソベロン・プルゼニドなど):便秘型IBSに使用されます。
  • 各種抗うつ薬 (パキシル・アモキサンなど):精神面からIBSの症状を緩和する薬です。
  • 抗不安薬 (ソラナックス・コレミナールなど):精神面からIBSの症状を緩和する薬です。
  • ラモセトロン (イリボー):下痢症状を改善する薬です。
  • ロペラミド (ロペミン):下痢症状を改善する薬です。